2016年07月29日

「塔」2016年7月号のつづき

湯浴みせしむすめのからだ拭きやればタオルに残る湿りのすくなさ
                   小林貴文

まだ小さな娘さんなのだろう。全身を拭いてやっても、バスタオルがそれほど濡れることがない。子を愛おしむ気持ちが伝わってくる。

今じゃない季節のにおい図書館の本のページをぱらぱらすれば
                   上澄 眠

前に誰かが読んだ時の季節の匂いかもしれない。本の間に密封されていた時間が再び流れ始めるような感じがする。

言ったのにメールしたのに 寝ころべば雲に寝ころぶ桜花見ゆ
                   澤端節子

何か約束をしていたのに、相手が忘れてしまっていたのだろう。ぽっかり空いてしまった時間に空を眺めると、まるで桜が雲に寝ころんでいるみたい。

「受験者は実技を終了しなさい」とテープの声に救助は終はる
                   近藤真啓

何の実技かと思って読んでいくと「救助」の実技だというところに意外性がある。実際の救助の場面だったら途中では終われないのだが。

夕立を聴きながら飲むミルクティー洗濯物は濡れてるだろう
                   内海誠二

喫茶店でゆっくりしていたら夕立の音がし始めたのだ。外に干してきた洗濯物のことを思うが、今さらどうしようもない。

何もない線路の横で手をあげて列車に乗り込むアラスカ鉄道
                   双板 葉

田舎のバスなどで時々フリー乗降区間というのを見かけるが、これは鉄道の話。人家の少ない広野に伸びる線路が思い浮かぶ。

posted by 松村正直 at 06:58| Comment(0) | 短歌誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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