2016年07月08日

『海豹島』 のつづき

樺太から北海道に戻ってきた鈴鹿野風呂は、8月18日に網走を訪れる。ちょうど港には鯨があがったところであった。

 鯨揚ぐ知らせの笛の長鳴りす
 捕鯨船舳の銛の日を返す
 高鳴れる轆轤に鯨あげらるゝ

「轆轤」と言うと茶碗でも作るように思ってしまうが、ウインチのことである。尾びれにロープを掛けて吊り上げるのだ。

 鯨さく長柄包丁両手もち
 鯨さく忽ち磯を赤にそめ
 割かれゆく鯨の肉のなだるゝよ

岸に揚げられた鯨は、その場ですぐに解体されたようだ。
海の水が血に赤く染まってゆく。

 鯨割く仔鯨出でゝいとしけれ
 鯨さく尼も遊女も見てゐたり

解体された鯨はメスだったようで、お腹の中から胎児の仔鯨が出てくる。
港には大勢の見物客が集まっていたようだ。
「尼も遊女も」の句が、一連20句の最後となっている。

ちなみに網走は、現在でも国内に残る数少ない捕鯨の町の一つである。
http://www.city.abashiri.hokkaido.jp

posted by 松村正直 at 07:48| Comment(0) | 樺太 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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