2016年07月01日

「黒日傘」第6号

高島裕の個人誌。特集は「日本」。ゲストは澤村斉美。

  幼い私のためだけのクリスマスだつた。
耶蘇嫌ひの祖母の面輪も照らしたるクリスマスケーキの蝋燭あはれ
公用語を英語に切り替へたときの膨大な「国益」を想へり
(座布団を足でずらした!)宰相に株価を上げてもらつて感謝

高島裕「残光の祖国」30首より。

「日本」についての作者の思いをかなり正面から詠った一連。1首目、今になって思い出す祖母の姿。2首目は「国益」という観点だけで判断して良いのかという問い。3首目の初二句はテレビに映った安倍首相の仕種を詠んだもの。

海の果ての日本列島しなやかに反りつつ春の鳥たちを待つ
十センチほど開きたる窓からの風のまんなか子が手を合はす
倒壊家屋映れば指がテレビを消す子を抱くわれはソファに在りて

澤村斉美「つばめつばめ」30首より。

子を産んで母となった作者。全体に柔らかな言葉遣いによって子の様子や母としての思いを詠んでいる。1首目、弓なりに反る日本列島の形を俯瞰したような大きな歌。2首目、「十センチ」「まんなか」といった言葉がうまい。3首目、小さな子には見せたくないという思いと、消すことへのある種の後ろめたさ。

ゴミ出しの未明の路地の白鼻芯、その白線の鮮やかならず
背景に桔梗を長く咲かせつつ真夏の母は健やかに笑む
便意怺(こら)へつつ見て回る春画展、人間といふ襞をかなしむ

高島裕「ひとたび」30首より。
高島の歌では日常を詠んだこちらの連作の方が私の好み。

1首目、「ハクビシン」は額から鼻にかけて白い線があるのが名前の由来。都会暮らしのためか、それがぼやけてしまっている。2首目、元気だった頃の母の写真であろう。3首目「人間といふ襞」が印象的。その襞が様々な喜びや悲しみを生み出すのだ。

2016年6月3日、TOY、600円。

posted by 松村正直 at 07:30| Comment(0) | 短歌誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。