2016年01月13日

「りとむ」2016年1月号

編集後記に今野寿美さんが「出づ」「出ず」の問題について書いている。

●文語「出づ」の新かな遣い表記は「出ず」と初歩の頃に教わった。そうすると「出(い)ず」なのか「出(で)ず」なのか紛らわしい例があるため、ある全国紙の歌壇では、これのみ新かな遣いでも「出づ」を許容していると聞いた。(・・・)広辞苑の場合、見出し語の下に(イヅ)【出づ】とあるが、(イヅ)は旧かな遣いを【出づ】はその漢字表記を示しているとみることができる。ということは「片づける」「基づく」などと同じく、「出づ」も発音表記は「いず」だが新・旧かな遣いともに「出づ」(ダ行)が適正だろう。

これまで新かなは「出ず」、旧かなは「出づ」と考えていたものを、新旧ともに「出づ」とするという考えであり、なるほどと思って読んだ。

「出づ」「出ず」問題は、結社誌の校正などをしていても頭を悩ませることが多い。有島武郎の名著にしても、岩波文庫では『生れ出ずる悩み』、新潮文庫や集英社文庫では『生れ出づる悩み』と表記が分かれている。

広辞苑の漢字表記は確かに【出づ】なのだが、こうした例は他にも【閉づ】【撫づ】【恥づ】【愛づ】などがあって、これらの新かな表記はどうするかという問題にも派生していく。

この4つの動詞にしても一様ではない。「撫ず」「愛ず」という表記には「出ず」と同じ違和感を覚える。それに対して「閉ず」「恥ず」は、(私の場合)あまり違和感がない。これは、日常使っている口語新かなで「撫でる」「愛でる」とダ行であるか、「閉じる」「恥じる」とザ行であるかという点が関係しているのだろう。

結局どうすればいいのか、結論を出すのは難しい。

私自身について言えば、「出ず」「撫ず」「愛ず」という表記はたぶん使わない。「出る」「撫でる」「愛でる」と口語を使うことによって回避できる問題であるからだ。

posted by 松村正直 at 08:24| Comment(0) | 短歌誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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