2015年11月09日

落合けい子歌集 『赫き花』

2001年から2014年までの作品503首を収めた第4歌集。

このあさけ夜久野(やくの)峠を下りくる肉冠うすき雄鶏ひとつ
月光に漬物樽の並びゐて樽それぞれに母坐りをり
母よりも年を重ねて母さんはわたしの生みし子供のやうな
左側二番目の脚から蟻は歩くと聞けど確かめられず
水道の蛇腹の腹の腹ごとにとても小さなあなたが笑ふ
あぢさゐの葉を食べながらまひまひの壊れし殻のもどりてゆかむ
瓶と瓶ふれあふ音にめざめたる少女のころの靄のしろさよ
安来節ちよこつと名人修了書いただく夫の礼(ゐや)の深さや
コンビニのミートスパゲティくにくにとプラスチックのフォークで食べる
かげりくるひかりとともに降りゆきし少女のあとの席に移りぬ

1首目、「あさけ」という時間と地名の「夜」の絶妙な組み合わせ。
2、3首目は、作者が9歳の時に亡くなった母を詠んだ歌。第1歌集『じゃがいもの歌』から一貫して詠まれ続けているテーマである。
5首目、「腹」を3回繰り返しているのが面白い。
6首目、殻のひび割れが治っていく様子が目に見えてくるような歌。長時間撮影した映像を早送りしているみたいなイメージだ。
8首目、観光で踊りを体験してみたのだろう。夫の生真面目さが微笑ましい。
9首目、カタカナの多用と「くにくに」というオノマトペがいい。ちょっと食べにくい感じがよく表れている。

2014年11月29日、現代短歌社、2500円。

posted by 松村正直 at 23:59| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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