2014年05月24日

大松達知歌集 『ゆりかごのうた』

2009年から2013年までの作品444首を収めた第4歌集。
作者とは同じ年齢ということもあって、随所に共感しながら読んだ。

海の上にも電波の淡き濃きありて濃きところにて妻とつながる
眠らむと文語でおもふ眠ろうの口語の力足りない夜は
えんぴつをやさしくにぎるその中を道路工夫のあしおとのせり
語句登録したる〈古茶(こちや)〉〈御座(おまし)〉〈税所(さいしよ)〉など卒業ののちもパソコンにあり
バラ肉を巻かれてゐたる幼気(いたいけ)なオランダ雉隠しに喰らひつく
いまはまだsadの他の語彙のなくsadと書けりその母の死を
支援物資のなかに棺のあることを読みてたちまち一駅過ぎつ
有給休暇届書きをり〈達〉の字の之繞の点が最後に乾く

まずは、歌集前半から。
妻を詠んだ歌、教師としての歌、言葉に関する歌に注目すべき作品が多い。

1首目は携帯電話のこと。目に見えない電波を濃さで表現しているのが面白い。
4首目は生徒の珍しい名字。生徒と教師という関係のあり方が見えてくる歌だ。
5首目の「オランダ雉隠し」はアスパラガスの和名。他にも「ウランバートル」が「赤い英雄」だったり、「ちちんぷいぷい」が「智仁武勇武勇」だったり、「分娩」が「デリバリー(配達)」だったりと、言葉をめぐる雑学的な歌がたくさんある。
7首目は東日本大震災の歌。支援物資と言えば食料や水、毛布などをすぐイメージするが、そこには「棺」も含まれているのだ。1万数千の棺が必要となった震災の重い事実である。

2014年5月16日、六花書林、2400円。

posted by 松村正直 at 11:55| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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