2017年05月14日

鈴木博之著 『日本の地霊(ゲニウス・ロキ)』


1999年に講談社現代新書から刊行された本の文庫化。

「地霊」という観点から、都市や建築を読み解くというスタイルで書かれた本。普遍的な「空間」として建築を捉える西欧的な考え方に対し、著者はその土地固有の「場所」を意識した建築の捉え方を提示する。

「地霊(ゲニウス・ロキ)」とは、土地の単なる因縁話や因果律ではなく、土地へのまなざしなのであり、都市や建築とわれわれとを橋わたしするものなのである。

取り上げられているのは、国会議事堂、広島祈念平和公園、耕三寺、三菱・岩崎家、常盤台住宅地など。どれも刺激的な話ばかりである。

広島平和記念公園の計画は、原爆ドームをすべての中心に置き、この一種聖性を帯びた廃墟に捧げられた場所を造り出すための計画なのである。こうした場所のデザインは、ただちにわれわれに厳島(いつくしま)神社の境内配置を想起させる。

何という鮮やかな切り口だろう。「平和記念資料館」―「慰霊碑」―「原爆ドーム」という軸線構造を持つ平和祈念公園と、厳島神社の「大鳥居」―「拝殿」―「本殿」―「弥山」という配置を重ね合わせているのである。

確かに1階がピロティとなった資料館やアーチ状の慰霊碑の形は、言われてみれば鳥居をイメージさせる。ものを見る、考えるとは、なるほどこういうことなのだ。

2017年3月25日、角川ソフィア文庫、880円。
posted by 松村正直 at 08:18| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする