2017年04月20日

橋本陽介著 『日本語の謎を解く』


副題は「最新言語学Q&A」。

著者は高校で「言葉の謎に迫る」という授業を始めるにあたって、生徒から言語に関する疑問を募集した。この本はその疑問に答える形で73個のQ&Aを収めている。

日本語の起源、音声、語彙、言語変化、書き言葉と話し言葉、「は」と「が」、主語、活用形と語順、「た」と時間表現など、話題は多方面に渡っているが、全体を通して著者のものを考える姿勢が一貫しているのでバラバラな感じは受けない。

7か国語をほぼ独学でマスターしたというだけあって、英語や中国語など様々な外国語との比較も多く、日本語の性質や特徴がよく見えてくるところも良かった。

印象に残った部分をいくつか引く。

形の上では「全然+肯定形」でも、話者の気持ちは依然として否定なのです。文法を見る時に、文字だけ見て分析すると、本質を取り逃すことがあります。
主語の本質とは何でしょうか。主語というくらいですから、文のメインになるものだと思ってしまいそうですが、じつはそうではありません。文の主役は述語です。
日本語では、ものごとを上から客観的に眺めるのではなく、状況の内側からの視点に同化してしまうのが普通です。
日本語の小説で、「タ形」と「ル形」が混在しているのは、過去の出来事を振り返って語るのではなく、物語の場面(物語現在)を現在として語っているからです。
タ形を使うと、その動作の終わったところを点で捉えます。一方、ル形を使うと、線で捉えるような感じになります。最近の小説、特に流行小説はスピード感を出すためか、ル形の使用が増えています。

最後の引用部分など、近年の口語短歌における「ル形」の多さとも関連してくる話のようで、とても興味深い。

2016年4月20日、新潮選書、1300円。
posted by 松村正直 at 10:10| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする