2014年08月31日

江戸雪歌集 『声を聞きたい』

2009年から2014年の作品を収めた第5歌集。

タイトルは「ここにあるただあるのみの真っ白の大皿いちまい声を聞きたい」から取られている。この歌は初出(「塔」2013年6月号)では、結句が「声がききたい」であった。

ネパールの銀の鋏に彫ってある草の紋様やわらかそうな
たわたわとまぶしい朱欒(ざぼん)こえあげて泣いた私はきのうのわたし
もういちど横顔を見て立ち上がるわれが去りゆくものであるから
対(むか)うときいつもあなたのさくら色の爪を見ていたどうしようもなく
少年のうすい胴体つつみたるTシャツにジョン・レノンほほえむ
前髪にからまってくる囀りに母音はなくてかろやかにゆく
横顔のむこうエノコログサが揺れまたおなじことたずねてしまう
あさがおの蔓あちこちにぶつかって夏にはいつも自転車なくす
カサブランカのひらきはじめた部屋のなか繋ぎ目のない時間を過ごす
カーテンを透かす光を見つめてる目覚めたことに気がつきながら

I部(2009年〜2011年)には一部文語が使われているが、だんだんとその数は減っていき、II部(2012年〜)になると、ほぼ使われなくなっている。今では完全な口語文体と言っていいだろう。

1首目は草だけでなく鋏まで「やわらかそうな」気がしてくるのが面白い。
3首目は別れの場面。下句に意志の強さを感じる。
4首目は少し俯いて視線をそらしている様子が「さくら色の爪」から伝わってくる。
6首目は「母音はなくて」が独特な表現。「ch」「t」「k」「s」「p」といった子音だけで鳴いているのだ。それが「前髪にからまってくる」とも合っている。
8首目は上句と下句のつながり方が面白い。「あちこちにぶつかって」が緩やかに下句を導いてくる。
10首目はベッドで目を覚まして、しばらくそのままでいる時の感じ。

2014年7月15日、七月堂、2500円。

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2014年08月30日

「紅葉の万博公園で短歌を詠む」

11月6日(木)にJEUGIAカルチャーの一日講座として「紅葉の万博公園で短歌を詠む」という吟行を行います。大阪の万博公園を散策して歌を詠み、昼食を食べた後に批評や添削を行うという内容です。申込み締切は10月30日、定員20名。詳しくは下記のページをご覧ください。

http://culture.jeugia.co.jp/lesson_detail_17-15703.html?PHPSESSID=velk1kjh16387uhj9rnv4vqam6

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2014年08月29日

海洋堂フィギュアワールド

美術館「えき」KYOTOで開催されている「海洋堂50周年記念 海洋堂フィギュアワールド」を見に行く。

1964年にわずか一坪半の模型店としてスタートした海洋堂の歴史と今をたどる展覧会。会場は「海洋堂50周年の軌跡」「ガレージキットの創世記」「おまけフィギュアミュージアム」「精緻なるヴィネット・フィギュアの世界」「ミュージアムフィギュアの世界」「全身可動・リボルテックフィギュアの世界」「海洋堂造形作家列伝」という構成になっている。

ワールドタンクミュージアム、栞子さんのヴィネット、東京国立博物館公式フィギュア「風神」「雷神」、リボルテックスネークなど、思わず見惚れてしまうものばかりであった。

8月31日まで。


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2014年08月27日

JR奈良線

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わが家の最寄りの踏切から見たJR奈良線(奈良方面)。
京都と奈良を結ぶJR奈良線は、京都―東福寺―稲荷―JR藤森を過ぎると単線になる。息子が小さかった頃はよくこの踏切に来て、電車を見せていたものだ。

日常よく使うJR藤森駅も1997年に新しくできた駅である。
京都に住み始めたのが2001年なので、当時は本当にできたばかりという感じで、駅の周辺にも畑や雑木林が広がっていた。今ではだいぶアパートや家が建ち並んできたけれども。

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2014年08月24日

塔60周年記念全国大会 in 京都

・ダンボール13箱分のバックナンバーを家と事務所から運び込んで無料配布。

・懇親会の藤田邦統さんのお話が良かった。初めて聞くエピソードあり。

・3次会の店はとりあえず30〜40名で予約していたのだが、39名が参加。
 3次会まで来ると圧倒的に若い人が多い。

・京都新聞の夕刊に記者会見の記事が大きく載る。
   http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20140823000062

・大会が無事に終ってホテルから帰ろうとしたら大雨。


 
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2014年08月21日

「短歌研究」9月号

短歌研究新人賞が発表になっている。

原爆は公園に堕ちてよかつたと子の声に児の聲は応へぬ
              佐藤伊佐雄

という佳作(5首掲載)の一首が印象に残った。

広島の平和記念公園に来ている子が、「家がある所ではなく広い公園の上に落ちたので良かった」と言ったのだろう。もちろん、現在公園になっている場所にかつては家が建ち並んでいたことは、平和記念資料館の模型を見ればわかる。また最近ではCGによる復元作業なども行われていて、当時の様子を知ることができる。

公園に原爆が落ちたのではなく、原爆で何もなくなった場所が公園になったのだ。

でも、昨年広島に行った時に、うちの息子も全く同じようなことを言ったのであった。確かに今の風景だけを見るとそうとしか思えないのだろう。だからこそ、そこにかつては多くの家があり、多くの人々の暮らしがあったことを記録として残していく必要があるのだ。田邉雅章著『原爆が消した廣島』もそういう一冊である。

「児の聲」は原爆で亡くなった子供の声だと思う。「聲」という旧字を使うことによって、今の子供ではないことを表している。「応へぬ」の「ぬ」は完了ではなく、「応へず」という打消の意味として読んだ。戦後69年の歳月の経過とそれに伴う記憶の風化に対する危機感がよく伝わってくる一首である。

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2014年08月20日

書籍販売

8月23日(土)に行われる「塔」60周年記念全国大会の公開シンポジウム「言葉への信頼と危機」には、会員と一般の方あわせて800名が参加される予定です。

当日はロビーにて、角川書店、短歌研究社、本阿弥書店、青磁社など、各出版社による書籍販売も行われます。六花書林さんも東京から来て、私の本を売って下さいます。

 ・評論集 『短歌は記憶する』 (2010年)
 ・評伝 『高安国世の手紙』 (2013年)
 ・歌集 『午前3時を過ぎて』 (2014年)

まだお持ちでない方は、どうぞこの機会にお買い求めください。

posted by 松村正直 at 20:44| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月19日

ヘリオトロープ

伊藤一彦歌集『海号の歌』の中に、こんな一首があった。

細りたる心いくたびも嗅ぎにけりヘリオトロープの甘き花の香

「ヘリオトロープ」と言えば、もちろん伊藤の代表歌でもある

啄木をころしし東京いまもなほヘリオトロープの花よりくらき
              『火の橘』

を思い出す。東京に対する憧れと屈折した思いを感じさせる内容で、明治時代から続く「ふるさと」と「東京」の二項対立を鮮やかに描き出している。

この歌の背景にあるのは、夏目漱石の『三四郎』ではないだろうか。九州の田舎から東京に出て来た三四郎は都会的な美禰子に憧れるが、その美彌子が三四郎の薦めるままに買ったのがヘリオトロープの香水であった。そして、その香水は小説の終り近くでもう一回登場する。

「ヘリオトロープ」と女が静かに言った。三四郎は思わず顔をあとへ引いた。ヘリオトロープの罎(びん)。四丁目の夕暮。迷羊(ストレイ・シープ)。迷羊(ストレイ・シープ)。空には高い日が明らかにかかる。

「ヘリオトロープ」の甘い香りは、美彌子の魅力とともに東京の華やかさとも分かちがたく結び付いている。そのイメージが伊藤の歌にもつながっているように感じるのだ。

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2014年08月17日

「続 いま、社会詠は」のこと

6月7日に大阪で行われたクロストーク短歌「続 いま、社会詠は」のことを、下記の時評で取り上げていただきました。

・澤村斉美「非力な歌を読みたい」(「短歌研究」8月号)
・大森静佳「彫りの深い〈私〉を束ねて」(「塔」8月号)
・石川美南「照り返されるということそれぞれの、三年」(「現代短歌」9月号)

ありがとうございます。

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2014年08月16日

「佐佐木信綱研究」第2號

佐佐木信綱研究会が年に2回発行する雑誌の3冊目(第0號からスタート)。
今回は「校歌・軍歌特集号」。

これまで歌人の側からはあまり取り上げられてこなかった信綱の校歌と軍歌について、詳細な調査や研究を行っている。校歌・軍歌の作詞の方法や、校歌・軍歌に対する信綱の考え方がよくわかる内容となっており、大きな成果と言っていいだろう。最後まで引き込まれて読み耽ってしまった。毎月の例会の充実ぶりがうかがえる。

次号では唱歌と新体詩を取り上げる予定とのこと。
この雑誌からはしばらく目が離せない。


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2014年08月15日

小林朋道著 『先生、モモンガの風呂に入ってください!』


副題は「[鳥取環境大学]の森の人間動物行動学」。
シリーズ第6弾。

登場する生き物は、キクガシラコウモリ、セグロアシナガバチ、イワガ二、ウミウシ、イソギンチャク、イトマキヒトデ、タコ、スナガニ、ヒキガエル、アカハライモリ、ニホンモモンガ、シジュウカラなど。

著者の生き物好きは、次のような文章からもよくわかる。

この潮だまりのイソギンチャクたちは、生態学的には一つの個体群であり(一つの村のようなもの)、私は、この光景を見るたびに、この村の住人一人ひとりの戸籍台帳をつくりたいという衝動にかられる。

世の中には、こういう人もいるのである。
その生き物好きが高じて、著者はついに自分のフィールドである鳥取県智頭町芦津の森を「モモンガの森」と名付けて、環境保全と地域の活性化を目指す「芦津モモンガプロジェクト」をスタートさせる。
http://dem2.kankyo-u.ac.jp/momongaoutline.html

何だかとっても楽しそうだ。

2012年3月20日、築地書館、1600円。

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2014年08月14日

「台湾歌壇」第21集

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台湾の陳淑媛さん(「塔」会員)から、今年7月に刊行された「台湾歌壇」第21集を送っていただいた。出詠73名、214ページの堂々たる内容である。

「台湾歌壇」の前身である「台北歌壇」は、1968年に呉建堂(孤蓬萬里)氏により創設された。その死後、2003年に「台湾歌壇」と改称して再出発し、現在は蔡焜燦氏が代表を務めている。毎月、台北と台南で歌会を開いているほか、今号には「ハワイ短歌会」との交流の様子も記されている。

油桐花の白き花咲く杣の里五月の吹雪ひらひら散りゆく
水張田の何処まで続く花東平野灌漑豊かなる我がフォルモッサ
何時の日に国とふ名のある台湾よその日の来るまで我が生きたしも
                      陳淑媛

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2014年08月13日

「うた新聞」8月号

「引揚者のうた」という特集が組まれている。

・桜井登世子 「海ゆかば」の幻想へ
・小宮山輝 記憶の中の死者たち

という文章と、20名の「3首+コメント」が載っている。
みな、満州、中国、朝鮮、台湾などから引き揚げてきた人たちだ。

その中に、樺太から引き揚げてきた人もいる。

 真岡町、ホルムスクと名を変へてより鰊の漁は絶えて異国に
              林 宏匡
 撃沈されし泰東丸の乗船名簿をさなき児らもあまたつらなる
              林田恒浩

敗戦時、樺太には約40万人の日本人が住んでいた。
ソ連軍の攻撃によって亡くなった人だけでなく、シベリアに抑留されて亡くなった人も多い。

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2014年08月10日

お墓参り

朝から台風による雨風が、激しくなったり弱まったりを繰り返す。
午後3時過ぎ、雨風もだいぶ落ち着いてきたので、東山浄苑へお墓参りに出掛ける。鴨川の水が溢れそうなほどに波打っているのが見えた。

お墓参りを無事に済ませて、夕方からは新都ホテルに親類が集まって食事。
ここは今年の「塔」の全国大会の会場となるところ。
気が付けば、大会までもう2週間を切っている。


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2014年08月08日

東京へ(その2)

その後、隣接する井の頭公園へ。
22年ぶりだと思う。

よく晴れた暑い日ではあったけれど、せっかく来たのだからとボートに乗る。
手漕ぎは日差しをまともに受けるので、足漕ぎの屋根付きのものを選ぶ。

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さらに、せかっく来たのだからと動物園にも行く。
「ここのゾウはこの前死んだよね?」とか、「いや、あれは天王寺動物園のゾウだよ」とか、「花子って名前のゾウはたくさんいるな」とか、喋っているうちに到着。

国内最高齢のゾウの「はな子」は健在であったが、午後1時までの公開ということで残念ながら見られず。でも、ペンギン、カピバラ、アカゲザル、ヤクシカ、メンフクロウなど、思ったよりいろいろな動物がいた。

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「リスの小径」では、クルミを食べたり、寝転がったりしているリスを間近で見られる。なかなか楽しい。

結局1泊2日で、新横浜→町田→八王子→三鷹→東京とめぐって、京都に帰ってきた。

posted by 松村正直 at 15:58| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月07日

東京へ(その1)

昨日は、3月に亡くなった塚原さんの納骨のために東京の町田市へ。
母親の買ったお墓に行くのは初めてのこと。
草木がたくさん生えていて、公園のような気持ち良いところだった。

お墓にはペットも一緒に入れるようになっていて、犬のタローが既に入っていた。
そこへ塚原さんのお骨と、猫のシロの骨を納めた。
その後、みんなで昼食を取って、八王子のホテルに一泊。

今日は、父親と待ち合わせて三鷹にあるジブリ美術館へ。

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アニメの仕組みや製作過程がよくわかる展示になっていて、大人も子供も
楽しめる。外国の方が驚くほどたくさん訪れていた。
日本のアニメはそれだけ有名なのだろう。

posted by 松村正直 at 22:34| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月06日

赤坂憲雄著 『イザベラ・バードの東北紀行[会津・置賜篇]』


副題は「『日本奥地紀行』を歩く」。

イザベラ・バードの『日本奥地紀行』のうち、1878年6月24日から7月3日までの会津の旅と、それに続く山形県の置賜地方の旅を追ったもの。「第一篇 会津紀行」と「第二篇 置賜紀行」で文章の書き方や分量に大きな違いがあるが、それは別々の場所に発表した文章が元になっているからのようだ。

従来読まれてきた『日本奥地紀行』は原著の簡略本をテクストとしたものであったが、最近になって金坂清則訳『完訳 日本奥地紀行』(全4巻)が刊行され、原著の全貌が明らかになった。本書でもその成果が随所に織り込まれている。

バードは置賜地方の後は山形県の上山市を訪れている。斎藤茂吉が生まれる4年前のこと。バードの描く街道の姿に茂吉「念珠集」の文章が重なって思い浮かんでくる。

2014年5月23日、平凡社、1800円。

posted by 松村正直 at 05:45| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月05日

座談会「編集部、この十年」

「塔」2014年4月号 (創刊60周年記念号) に掲載された座談会 「編集部、この十年 ―上り坂の向こうに―」 が塔のホームページにアップされました。
http://www.toutankakai.com/cp-bin/kaihouarchive/index.php?eid=27

司会:荻原伸
参加者:松村正直、永田淳、江戸雪、藤田千鶴、なみの亜子

結社の運営や結社誌の編集について、楽しいことも辛いことも、かなり率直に語っています。皆さん、どうぞお読みください。

posted by 松村正直 at 16:07| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月04日

坂道と駅

私が住む集合住宅は小高い山の中腹に立っている。家の前の坂道を下っていくと、10分ほどで京阪電車の「墨染駅」に出る。駅のあたりは古くからの商店街になっていて、電車に乗る時やお店で買い物をする時は、いつもこの坂道を上り下りする。

ゆるやかに蛇行した坂道を上り下りするのは楽しい。坂の途中には交番があって、今の季節ならそのわきにさるすべりが咲いている。私の通う昔ながらの床屋さんもこの坂道にある。夜の坂道を上っていくと、坂の向こうに大きな満月が顔を出すこともある。

私が生まれ育った町(東京都町田市玉川学園)も、X字の谷底を小田急線が走っていて、家から最寄りの「玉川学園前駅」に行くには、坂道や階段を上り下りするのであった。玉川学園を離れてもう20年になるけれど、時々その頃のことを思い出したりする。


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2014年08月03日

映画 「この空の花」

監督:大林宣彦
出演:松雪泰子、高島政宏、原田夏希、猪俣南ほか

副題は「長岡花火物語」。
2012年公開の映画だが、新作「野のなななのか」の上映に合わせて、元・立誠小学校の教室を使った立誠シネマで上映されている。

1945年の長岡空襲、2004年の中越地震を経験した長岡市を舞台に、その歴史と復興の姿を描いた作品。東日本大震災からの復興や平和を考えるメッセージが強く打ち出されており、好き嫌いが分かれるかもしれない。

「歴史的事実を革新的なドキュメンタリィ・タッチの劇映画として綴る」とチラシに書かれているように、現在と過去、高校生の演じる舞台劇の場面などが次々と切り替わり、重層的な奥行きを生み出している。大林監督健在といった感じ。

登場人物が急にカメラに向って喋り始めるところなど、かつて(もう20年以上前)見た『青春デンデケデケデケ』を思い出したりした。

立誠シネマ、160分。

posted by 松村正直 at 11:20| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月02日

小林朋道著 『先生、キジがヤギに縄張り宣言しています!』


副題は「[鳥取環境大学]の森の人間動物行動学」。
シリーズ第5弾。

こういうシリーズものは、だんだんつまらなくなっていくのが普通だが、このシリーズは安定して面白い。今回登場する生き物は、コゲラ、スズメ、クマノミ、ヒトデ、デバスズメダイ、イソギンチャク、フェレット、クサガメ、イシガメ、ヤモリ、ヒメネズミ、フトミミズ、ヨコエビ、アカネズミ、ニホンジカ、ホンドモモンガ、ヒヨドリ、キジ、ヤギなど。

求愛時やカップルの絆の維持強化に、親子の給餌行動が借用されるのは、ニワトリ以外の、多くの鳥や哺乳類でも見られることだ。人間で見られるキスも、親が幼児に、口から口へ食べ物を与える行動に由来する、と考える研究者もいる。

人間の行動もこんなふうに説明されると、実に面白い。
あれこれ想像が広がっていく。

2011年4月1日、築地書館、1600円。

posted by 松村正直 at 11:32| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月01日

志賀直哉著 『清兵衛と瓢箪 網走まで』

初期の短編小説18編を収録。執筆時期は明治37年から大正3年、年齢で言えば21歳から30歳までの作品である。25年ぶりくらいに再読したが面白かった。

「剃刀」「濁った頭」「笵の犯罪」と、推理小説風な話がいくつも。5歳くらいの女の子を騙して家に連れて来てしまう「児を盗む話」などは、最近の事件を思わせる内容だ。

私はその晩この児を盗む想像に順序を立てた。実行の決心は中々つかなかった。然し只想像を繰り返すだけでは満足出来なくなった。私は可恐々々(こわごわ)玩具(おもちゃ)とか、子供の好きそうな菓子などを用意して見た。私の肩は相変らず凝っていたが、気分は快い緊張を感じていた。

他にも、京都で下宿を探す「ある一頁」が、当時の京都の町の様子を伝えていて興味深い。

1968年9月15日発行、2011年9月15日改版、新潮文庫、520円。


posted by 松村正直 at 00:04| Comment(1) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする